潮出版社
 
 
潮2022年6月号
月刊「潮」 潮2022年6月号
発刊日
2022年5月2日
価格
660 (本体 600円)

目次

【特別企画】ウクライナ危機と日本の選択

善悪二元論を超えて、「曖昧さ」に耐える力を。佐藤卓己

パンか自由か――西側諸国に突き付けられた難問。竹森俊平

【連載】鎌田實の「希望・日本」(25)

 戦禍の地へ届け! 私たちの「ひと羽ばたき」。鎌田 實

 

【特集】未来を担う若者たちへ

【対談】学力は大事、でも「生きる力」はもっと大事。平田オリザ×中邑賢龍

【対談】「子どもまんなか社会」の実現へ、公明党への期待と要望。駒崎弘樹×山本香苗

 

【特集】「心と体」を考える

「もしかして、燃え尽き症候群?」と感じたら。久保真人

【ルポ】「健常」と「障害」のあいだ―― 境界知能とは何か。黒島暁生

【連載対談】ニッポンの問題点(54)

 日本から「障がい者」という概念をなくしたい! 兼子文晴×田原総一朗

 

連載ドキュメンタリー企画

民衆こそ王者 ――池田大作とその時代

<希望をつなぐ人>篇(13)

 

【人間探訪】 稲垣えみ子

上達しないピアノを老いの相棒に、

私はほがらかに生きていく。

 

 

【インタビュー】世界35カ国同時発売の超大型ファンタジー、翻訳秘話

金原瑞人×吉原菜穂

 

【対談】高島礼子の歴史と美を訪ねて(21)

 戦乱に巻き込まれた庶民の悲劇と女性の強さ。

天野純希×高島礼子

 

台頭するポピュリズムと政党に求められる重要な役割。水島治郎

 

【ルポ】岐路に立たされた北方領土返還運動。粟野仁雄

 

「世界一清潔な空港」を支える、清掃の哲学。新津春子

 

「地球一個分の暮らし」を目指して―― エシカル生活のすすめ。末吉里花

 

【好評連載】

宿帳拝見――「あの人」が愛した湯(6)

 田中角栄、渡部恒三と会津東山温泉「向瀧」。山崎まゆみ

池田思想の源流 ―― 『若き日の読書』を読む(7)

 『隊長ブーリバ』とウクライナ紛争。佐藤 優

深掘り!「三国志」(11)

 ついに終焉を迎えた三国志の時代。塚本靑史

トクサンの「人間野球」日誌(10)

 自分以外の選手はすべてが師匠。トクサン

世界への扉(68)

 ウィル・スミス騒動に見る「有害な男性性」とは。三浦瑠麗

寄せ場のグルメ(35)

 焼き肉の概念が変わる鹿浜の名店。中原一歩

 

【連載小説】

蒼天有眼 ―― 雲ぞ見ゆ(34) 山本一力

梧桐に眠る(5) 澤田瞳子

吉野朝残党伝(17) 天野純希

 

第32回 読者手記発表!

テーマ「方言、万歳!」

 

読者手記 大募集!

(第35回 テーマ 大切な人へのメッセージ)

 

 

USHIO情報BOX

暮らしの相談室【保険編】(満期になる個人年金保険の受け取り方は?)/ecology&economy新しい生活様式のエコライフ(小物を処分する)/熟年世代の危機管理術(自分の住む地域の安全度を考える)/SAFETY&SECURITY IT博士と学ぶデジタル社会の歩き方(スマホ詐欺にご注意!! ~巧妙化する手口と対策~)/楽して楽しむガーデニング(夏野菜の栽培)/ナンバープレイス/手近な素材で簡単おうちごはん(イワシ缶詰)/近ごろカラダが何かヘン!?(イライラ、落ち込みが多い)/サトミツの知っててよかった!お掃除豆知識(照明器具をきれいに)/おうち時間に簡単体操(歩くための筋肉を鍛えよう)/シネマ&DVD/ステージ&ミュージアム/短歌/俳句/時事川柳/最近気になるモノ(サスティナブルなバッグ)

 ずいひつ「波音」

こころを聴く(78)未必のすすめ。中西 進/集団のウチとソト。広井良典/言葉の先の想像力。小川さやか/川辺のくよくよ。白井明大/母の人生。植本一子

PEOPLE2022/世界のネコたち(福島県)/ティー・エイジ流カフェ散歩(本と珈琲のある場所が人をつないでいく)/トピックス(大きくなったね双子パンダ)/四季の風景(お母さんへ感謝を込めて)

 

 潮ライブラリー/新聞クリッパー/今月のちょっといい話/クロスワード・パズル/囲碁・将棋/読者の声/編集を終えて

 

 

読みどころ

【特別企画】ウクライナ危機と日本の選択

善悪二元論を超えて、「曖昧さ」に耐える力を。 佐藤卓己(京都大学大学院教授)

パンか、自由か──西側諸国に突き付けられた難問。 竹森俊平(国際経済学者、経済産業研究所上席研究員)

ほか1

 今月号では、連日ニュースで報じられる「ウクライナ侵攻」に関して、これまでとは少し違った角度から、二人の識者に論じていただきました。

 メディア史と大衆文化論が専門の佐藤卓己氏は、ロシアとウクライナ双方の情報戦に惑わされず、長期的な視点を持ち、「歴史から見る」ことが重要だと述べています。例えばロシア側が呼称する「特別軍事作戦」とは、日本語の感覚に置き換えると「事変」となり、そこから「満州事変」「上海事変」を思い起こすことで、今回の「ウクライナ事変」が、かつての日本の戦争と同じような軌跡を辿っていることが見えてきます。

 また、人間の脳は「曖昧」な状況に耐えることができず、本能的に早く理解をして、安心したいと考えるそうです。そこに善悪が関わってくると、なおさら早く結論を出したくなるのが人間の心情。しかし、こと戦争報道に関してはその多くがグレーゾーンであり、不快であっても直情径行で判断するのではなく、曖昧さに耐える力を鍛えることが大切だと喝破します。

 一方、三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長の竹森俊平氏は、今回の紛争は二層構造になっており、表層の「ロシア対ウクライナの軍事戦」だけでなく、その奥にある「ロシア対アメリカ・EUの経済戦」を理解しなくてはならないと語ります。特にロシアへの経済制裁は、日本をはじめ制裁側にも大きな影響をもたらすそうです。その時、西側各国が耐えきれるかどうか。ソ連崩壊後、崇高な理念である「自由」が、生きるために必要な「パン」の前に屈したことが、プーチン大統領という指導者を生んだという歴史的事実を鑑みると、ウクライナ紛争は国家としての日本と、そこに生きる私たちにも大きな難問を突き付けていることがわかります。

 

 

【特集】未来を担う若者たちへ

〈対談〉学力は大事、でも「生きる力」はもっと大事。 

平田オリザ(劇作家、演出家)×中村賢龍(東京大学先端科学技術研究センターシニアリサーチフェロー)

〈対談〉「子どもまんなか社会」の実現へ、公明党への期待と要望。 

駒崎弘樹(認定NPO法人フローレンス代表理事)×山本香苗(公明党参議院議員)

 劇作家で、演劇を通したコミュニケーション教育を推進してきた平田オリザ氏と、社会問題を解決するための実践的研究を行っている中邑賢龍氏は、制度疲労を起こしている日本の教育の実情に警鐘を鳴らします。特に「中学受験」に代表されるような偏差値に重きを置く教育システムは、子どもの才能や人間力を養うことができません。平田氏の「受験の競争に強い子を育てるより、隣の席の子に勉強を教えてあげる子どもを育てるほうが、将来を考えると効率的です」はとても印象に残る一言でしょう。お二人がそれぞれ取り組んできた独自の教育システムとその効果のほどを、本対談を通してぜひご確認ください。

 もう一組は、政策起業家として子育てや教育に関する提言を発信・実践してきた駒崎弘樹氏と、国会で審議中の「こども家庭庁法案」「こども基本法案」策定の中心人物である山本香苗参議院議員の対談です。二人の意見の中でも特に切実なのが、これまで日本では「親の権利」を尊重するあまり、「子どもの権利」がないがしろにされてきたという点。「子どもを真ん中に据えた社会」という大きなパラダイム転換に向けて、政治と民間が手を携えて取り組んでいくことで意気投合。また、現場の声を聴き、政策に繋げていく公明党に対して、駒崎氏は大きな評価と期待を寄せています。

 

 

【特集】「心と体」を考える

〈ルポ〉「健常」と「障害」のあいだ──境界知能とは何か。 

黒島暁生(ライター・エッセイスト)

ほか2

 「境界知能」という言葉を聞いたことはありますか。知的障害者と健常者のあいだに位置する知能指数で、IQ7084が目安と言われており、軽度知的障害(IQ70未満)よりは知能指数が高いものの、平均的な健常者の知能指数よりはだいぶ低いため、日常生活においても何らかの支援が必要と言われています。

 ところが障害とはみなされないため、必要な支援が必ずしも行き届いていません。そればかりか「ふざけている」「不真面目」といった誤解をされることも多く、ご本人はもとより、家族にとっても、無理解による困難に直面することが多いのです。

 このルポでは、当事者の二人の方への取材に加え、発達障害や境界知能の子どもさんたちを数多く指導してきた阿部教育研究所の阿部順子代表や、星美学園短期大学准教授の遠藤愛氏へのインタビューも掲載しています。日本の人口の約14%(1700万人)、実に7人に1人が境界知能といわれる中で、社会や周囲がどのように理解し、支援していくか。「成熟した社会」とは何かが、いま問われています。

 

 

 

【連載対談】高島礼子の歴史と美を訪ねて(21

戦乱に巻き込まれた庶民の悲劇と女性の強さ。

天野純希(作家)×高島礼子(俳優)

 人気連載「高島礼子の歴史と美を訪ねて」第21回のゲストは、小誌連載中の長編小説「吉野朝残党伝」が好評の天野純希氏です。今月号では、近著『もろびとの空──三木城合戦記』をテーマに語り合います。

 豊臣秀吉の「播州征伐」により、三木城に籠城した庶民たちの過酷な実情を描いた同作品は、あえて敗者の視点から語ることで戦争の悲惨さ、非人道性などを読む者に訴えかけてきます。天野氏は、歴史は「勝者の視点」に偏りやすく、史料も少ないため、小説家は想像力を駆使しなければならないと言います。また愚かなリーダーに率いられた時、苦しむのはいつも庶民、とくに女性たちであることから、加代というヒロインを作り上げたそうです。高島さんは、「戦国時代の物語なのに、随所にいまの状況とオーバーラップする場面があります。いまこそ多くの人に読んでほしい作品です」と述べています。

 

 

連載ドキュメンタリー企画(134

「民衆こそ王者 池田大作とその時代」希望をつなぐ人篇(13

 第二次世界大戦の地獄を経て、戸田城聖は「地球民族主義」を掲げた。

池田大作は御書(日蓮の遺文集)の講義を通じて、人々の心に平和の光を灯そうとしていた。

ソ連軍によってシベリアに抑留されたある壮年。戸田と池田に出会い、人生が変わった。

池田は、会長就任直後、彼に手紙を送っている。

〈いかなる宿命か、第三代となり、広布の陣頭に起つ。……さける事の出来得ぬ此の因縁。私は苦しみ、私は悩んだ〉

その封書には、池田が「此の御書こそ、学会精神」と心に刻んだ重要な一節が記されていた。

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