大沢在昌(作家)「解説」より
人間にとってヒューマニズムとは、表皮か核質か、最も目につきやすい場所か、目につきにくい場所か、そのどちらかにおいてしか位置づけようのないものだ。
核質にヒューマニズムをもった作家、手塚治虫氏は、ならば一度は、その核質そのものをテーマに物語を紡がねばならなかった。
それがこの「ブッダ」ではないかと私は思う。
【第一部】
第7章 生誕/第8章 技競べ/第9章 秘薬を求めて/第10章 予言/第11章 裁きの日/第12章 死の壁
【第二部】
第1章 王子/第2章 瞑想の園
ブッダの旅の行程図
解説 大沢在昌(作家)
【第一部】
第7章 生誕
スッドーダナ王の妃マーヤは、お産のためにコーリヤ国へ里帰りする途中で赤ん坊を産み落とした。マーヤ夫人は生まれた子に「シッダルタ」という名をつけた。
第8章 技競べ
バンダカはチャプラとの弓の技くらべで卑怯な手を使ってチャプラに瀕死の重傷を負わせた。
第9章 秘薬を求めて
チャプラは重傷だった。ナラダッタはアシタ聖者なら命を救う秘法を知っているといい、アシタへの手紙を書いて、タッタに託した。
タッタはまず馬にのりうつり、馬がバンダカに射られて倒れると、バンダカの馬にのりうつってヒマラヤへたどりつくが、アシタがカピラヴァストウへいっていると聞いて、カモにのりうつり、カモがワシに襲われるとワシにのりうつった。
第10章 予言
カピラヴァストウの城へアシタがやってきて、シッダルタを抱き上げて涙を流し、「この子が育って偉大な人になる頃には、わしはもう死んでおるだろう……それが見られないとは残念でな……」といった。
そこへ、ワシが手紙をくわえて飛び込んでくると息絶えた。アシタはナラダッタが動物たちを殺した罰として、畜生道に落とした。
第11章 裁きの日
ブダイはチャプラの母を殺すよう命ずる。チャプラは母とともに裁きを受け、「かあさんといっしょに死ぬ」と叫ぶ。
第12章 死の壁
タッタは先回りしてふたりを助けようとするが、兵士の投げた槍がふたりをつらぬき、ふたりは死んだ。タッタはコーサラ国への復讐を誓った。
【第2部】
第1章 王子
10年の年月がたった。成人したタッタは、カピラヴァストウの城にむかった。
シッダルタは遊びには興味を示さず、人に身分の差があることに疑問をいだき、「死」について考えるこどもだった。
コーサラ国からきたバラモンはシッダルタに「あした庭園へきなされ。そこでなんでも質問に答えてしんぜよう。あなただけにな」という。
第2章 瞑想の園
バンダカはシッダルタに弓を教え、庭園でシカやサルを射てみせる。シッダルタはバンダカをねらい「殺されるものの気持ちになってほしかったんです」という。
シッダルタは謎のバラモンのところへ行き、「死ぬって どんな感じなの?」と問う。バラモンはシッダルタに死の瞬間を味わわせ、シッダルタに「世界じゅうの人間に 人間の生きる道を教えなさい」という。