なぜ52歳で信州から上洛したのか――。
知られざる女勤王志士の命がけの奔走。
何故これほどの人を今まで書く人がいなかったのだろうか。
古川さんの文学は、日本の歴史上になくてはならないはずなのに
何故か作品化されていなかった女性に対するピースを埋める
〝発見〟と言えはしまいか。(縄田一男氏「解説」より)
風雲急を告げる都の情勢は信濃の地にも届いていた。
信州飯田に生まれ、豊丘の造り酒屋に嫁いだ歌人の松尾多勢子は勤王の志を胸に、
52歳にして単身で上洛を決意する。
天謀が横行する不穏な京都で、多勢子は隠密として若き志士たちの危機を救い、
窮地に陥っていた岩倉具視の命を助ける。
さらに、幕府方による孝明天皇の暗殺の密謀を探り出して国事に奔走する。
幕末の動乱において自身の信念を貫いた女性の物語。