潮出版社
 
 
潮2019年9月号
月刊「潮」 潮2019年9月号
発刊日
2019年8月5日
価格
649 (本体 590円)

目次

【特別企画】

「家族」の遠景。

巧妙化する詐欺に家族としてできること。 多田文明

「家屋の暴力」はなぜ繰り返されるのか。 信田さよ子

中高年引きこもりーー親の役割と子の自立。 小島貴子

貧困の連鎖を断ち切るために。 阿部 彩

結婚をめぐる親子のギャップを乗り越えるには。 佐藤 信

【ルポ】子も親も育ち直しができる寄宿生活塾。(上) 荒川 龍


【巻頭企画】

世界の構造変化と埋没する日本 寺島実郎


参院選総括と日本政治の展望 飯尾 潤


【特集】大人のための社会科見学

【対談】魅惑の「鉄道旅」にあなたも出かけてみませんか?

    有栖川有栖 vs 横見浩彦

屋鋪流「撮り鉄」のススメ。 屋鋪 要

見て! 来て! 感じて! 図書館の魅力。 立野井一恵


連載ドキュメンタリー企画105

民衆こそ王者  池田大作とその時代

未来に生きる人 篇(8)


「定年後格差」どう向き合うか。 橘木俊詔


【新連載】寄せ場のグルメ2。

東京最大の寄せ場「山谷」を歩く(中) 中原一歩 


京アニ放火事件ーー現場で何が起こったのか。 粟野仁雄


混迷する世界情勢を地政学で読み解く。 茂木 誠


【連載】ニッポンの問題点21

中国経済の行方と日本の役割。 瀬口清之 vs 田原総一朗


【シリーズ】鎌田實の輝く人生の「終い方」7

「死」に向き合い、「生」を過ごす。 鎌田 實


【人間探訪】

少年は〝学ぶ〟ことで、

希望と未来をつかまえた。 ウィリアム・カムクワンバ


【シリーズ】日本のなかで生きる移民たち3(最終回)

COLORSの挑戦ーー

日本と海外をつなぐ若者たち。 高橋幸春


師弟誓願の大道ーー小説『新・人間革命』を読む10

宗門による策謀の予兆。 佐藤 優


名越康文のシネマ幸福論12

「老い」の凄み。  名越康文


世界への扉37

性的被害者を救う道のり。 三浦瑠麗


エッセイ33 

小さな幸せ探検隊。 森沢明夫


大相撲の不思議45

断髪式。 内館牧子


【連載小説】

蒼天有眼 雲ぞ見ゆ8  山本一力

 

芦東山9  熊谷達也

 

覇王の神殿12 伊東 潤


読者手記大募集!

(第2回テーマ お袋の味)


ushio情報box

暮らしの相談室(年金編)(老後に必要な生活資金が2000万年って、ホント?)/初心者のためのスマホ活用術(スマホでスケジュール管理)/地球にやさしいエコライフ(暮らしを支える水)/悠々在宅介護術【入浴編①】(「浴槽への出入り」を安全に介助したい!)/最近気になるMONO(多機能なセンサーライト)/災害と防災(台風の被害予測と事前にできること)/主治医は自分! 未病発見・予防(休日後の疲れ)/ナンバープレイス/おいしく食べて健康づくり(秋に多い 胃の不調予防)/ビューティー・タイム(印象をマイナス5歳若く見せるメイク術)/シネマ&DVD/ステージ&ミュージアム/短歌/俳句/時事川柳/前新式 座ってできるリンパストレッチ(背中のばしストレッチ)


ずいひつ「波音」

こころを聴く45 悲しみの旅人。中西 進/縁は異なもの。佐々涼子/八村塁を育てたもの。山崎洋子/ビジネスパーソンが美術館に行く意味。門倉貴史/硫黄島から見える近現代日本の姿。石原 俊


カラーグラビア

PEOPLE2019/世界のネコたち(フィジー)/〝ティー・エイジ流〟カフェ散歩(「13年」の時が紡ぐカフェと人の良い関係)/屋鋪 要の〝撮り鉄〟紀行/トピックス(ニホンライチョウ)


潮ライブラリー/新聞クリッパー/今月のちょっといい話/クロスワード・パズル/囲碁・将棋/読者の声/編集を終えて

注目記事

・【特別企画】「家族」の遠景

「巧妙化する詐欺に家族としてできること」多田文明(ルポライター、ジャーナリスト)

「『家族の暴力』はなぜ繰り返されるのか」信田さよ子(臨床心理士、原宿カウンセリングセンター所長)

「中高年ひきこもり––親の役割と子の自立」小島貴子(キャリアカウンセラー、東洋大学准教授)

「貧困の連鎖を断ち切るために」阿部彩(首都大学東京教授)

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9月号の特別企画は「『家族』の遠景」。高齢化社会、核家族化、経済格差など、社会が急激な変化にさらされるなか、家族というコミュニティにも、大きな歪みが押し寄せているのではないか。そこで特別企画では、幅広い世代に渡る、家族の問題に着目し、その解決の手立てを探るべく、各界の識者にご登場いただいた。

高齢者の一人暮らしを狙い、時事を用いたストーリーで巧みにだますなど、巧妙化していく特殊詐欺の手口。自分も家族もだまされないためには、どうしたらよいのか。ルポライターの多田文明氏に語っていただいた。

20183月、そして20191月と、親からの虐待によって、幼い子供が亡くなるという悲劇が、ニュースで取り上げられた。臨床心理士の信田さよ子氏は、立て続けに起こる子供への虐待について、親世代、また夫婦間での暴力との繋がりを述べつつ、実際に暴力をなくしていくプログラムについて提示している。

キャリアカウンセラーの小島貴子氏は、中高年のひきこもりについて、子供世代の就職氷河期などの背景を理解したうえで、親は「期待」ではなく「信頼」を持つべきだという。「ちゃんとした仕事」という幻想は、親子どちらの首も絞めることになりやすい。お互いのことを理解したうえで、子育てを終わらせる重要性をお聞きした。

親世代から続く貧困によって、子供世代も貧困になりやすい。子供の7人に1人が貧困状態にあるというレポートに衝撃を受けた方も多いのではないか。解決策としては生活保護などの「川下対策」もさることながら、「貧困が発生する前に手を打つ『川上対策』」が重要である、と首都大学東京教授の阿部彩氏は語る。

どの問題も、現在という時代と切り離すことができない。現代の「家族」の姿を、ぜひご一読いただきたい。

 


・【巻頭企画】

「世界の構造変化と埋没する日本」寺島実郎(日本総合研究所会長)

 

9月号の巻頭企画では、「世界の構造変化と埋没する日本」と題し、日本総合研究所会長の寺島実郎氏に、世界の中で存在感が薄くなっている日本の現状と、各国との関係性の中でどのような立場を取っていくべきかをお聞きした。

寺島氏は1988年の日本のGDP(国内総生産)は世界の16%を占めていた一方、30年後の2018年にはわずか6%まで圧縮されたことを指摘。さらに急激な人口減少、また、東アジアやアメリカとの関係性など、経済面だけでなく政治・外交面でも埋没しつつある日本を浮き彫りにする。

その上で寺島氏は、日本はアメリカ周辺国にも中国周辺国にもなってはいけないと説く。日米安全保障条約や日米地位協定の不平等、日中韓の不協和音、北方領土問題に対するロシアとの交渉など、課題は山積している。国内に目を向けても、虚構の繁栄に浸るのではなく、実体経済を強くせよと警鐘を鳴らす。

論稿の最後で「国際社会における日本の存在感が埋没しているのは、政治でも経済でも、これまで大切にしてきた価値観や理念が崩れているからだ。日米安保の再設計も、実体経済の立て直しも、問われているのは日本の主体性であり、もはや逃げることもごまかすことも許されない」と述べている。

国際社会で日本が再び、存在感を取り戻すために、何が必要なのか。今、日本は正念場を迎えているといえよう。


 

「参院選の総括と日本政治の展望」飯尾潤(政策研究大学院大学教授)

 

「亥年決戦」となった7月の参院選。投票率は過去二番目に低く、与党が過半数を超えたとはいえ、結果として「現状維持」の選挙であったと政治学者の飯尾潤氏は論じる。野党は政権批判を繰り広げるだけで具体的な政策の代案を示さないし、一方で「安部一強政治」が飽きられてきたという事実もある。さらにリベラル勢力が伸びない代わりに、れいわ新選組やNHKから国民を守る党が議席を獲得したことについては、ポピュリズム(大衆迎合主義)のほのかな危険信号だとも述べる。

また、マスコミは「改憲勢力」が三分の二に届かなかったと強調するが、飯尾氏は自民党、公明党、日本維新の会を一つにくくるのは乱暴であり、為にする議論だと批判。

むしろ有権者にとって大切なのは、政治が中長期的に取り組むべき課題を冷静に問いかけることである。そこで飯尾氏は、「少子高齢化と人口減少が進行する中で、社会保障制度をいかに維持するのか」「災害多発列島の日本でいかに防災・減災に取り組むか」、そして「希薄化する人々のつながりをどう再構築するか」の三点を提示。特に連立政権のパートナーである公明党は、こうした課題に対し、これまで以上に遠慮なく自民党をリードしてほしいと訴え、また公明党が積極的に存在感を出すことが、連立政権の安定を図ることになると結論づけている。

 


・【特集】大人のための社会科見学!

「魅惑の『鉄道旅』にあなたも出かけてみませんか?」有栖川有栖(作家)×横見浩彦(トラベルライター)

「屋鋪流『撮り鉄』のススメ」屋鋪要(一般社団法人少年軟式野球国際交流協会理事)

他1本

 

夏休み真っただ中の8月。暑くて明るい陽射しを浴びながら、少し「大人な社会科見学」に、足をのばしてみてはいかが? そのような思いを込めて、今月号では、「大人のための社会科見学!」を特集。鉄道や図書館の魅力について語っていただいた。

ミステリー作家の有栖川有栖氏は、自称「乗り鉄」。日本全国全駅下車を達成した横見浩彦氏をお相手に、うたた寝をしても、お酒を飲んでもいい、受け身の「贅沢な時間」を過ごすことのできる、鉄道旅の魅力を語りつくす。お二人が鉄道に興味を持ったきっかけ、乗り鉄としての駅や鉄道の魅力、時刻表を見る楽しさ、そして読者に、おすすめの駅や旅のプランをお届けする。

続いてご登場いただくのは、元プロ野球選手の大洋ホエールズ、読売ジャイアンツで活躍した屋鋪要氏。現在は、少年野球チームのコーチであり、また「鉄道文化人」「鉄道写真家」としての顔を持っている。今回の企画では、屋鋪氏が「撮り鉄」になったきっかけや、お父様との鉄道の想い出、鉄道に惹きつけられる理由などをお聞きした。なお、カラーグラビアでも、屋鋪氏が撮影した蒸気機関車の秘蔵写真を大紹介!

大人だからこそ、さまざまな視点から「社会科見学」を楽しむことができるはず。さあ、あなたも新たな趣味を見つける旅に出てみませんか。

 


連載ドキュメンタリー企画(105

「民衆こそ王者 池田大作とその時代」未来に生きる人篇(8)

 

夜行列車で17時間––––。第3次中国訪問(1975)の最中、

池田は、首都・北京から中部の中心都市・武漢へ向かった。

一人の中国人教師との再会を果たすためだった。

池田は日中間に、政治や経済の波風にも揺るがぬ「友情の橋」を架けようとしていた。

先人たちの悲願。未来への希望––––多くの人々の思いをつなげたのは、

「大学」を舞台に紡がれた「信頼」である。

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