潮出版社
 
 
潮2020年2月号
月刊「潮」 潮2020年2月号
発刊日
2020年1月4日
価格
660 (本体 600円)

目次

月刊「潮」2020年2月号


【特別企画】解読!日本の選択

【対談】ブレない歴史観の磨き方。(後編)
安部龍太郎vs佐藤 優

日本は「スーパー大陸」の懸け橋になるべきだ。
ケント・E・カルダー

フランシスコ教皇の被爆地訪問が問いかけるもの。
秋山信将

香港はどこへ向かうのか。
興梠一郎

【連載対談】ニッポンの問題点26
最低賃金の引き上げが日本経済の特効薬。
デービッド・アトキンソンvs田原総一朗


【特集】ニッポンの肖像

【対談】いじめを許さない――大人にできること。(上)
荻上チキvs春名風花

それでも幸せな、日本の若者たち。
土井隆義

うちの子に限って――SNS犯罪の闇。
高橋暁子

【対談】交通誘導員とゴミ清掃員が見たニッポンの現実。
柏 耕一vs滝沢秀一

【ルポ】いのちと向き合う現場を訪ねて。(下)
小山朝子

【ルポ】認知症専門医が、母を看取って思うこと。
奥野修司


連載ドキュメンタリー企画110
民衆こそ王者――池田大作とその時代
未来に生きる人篇(13)


【巻頭企画】
色彩豊かな日本のあなたへ。
ロバート キャンベル


〝けんちゃん〟、七十八歳で映画館をつくる。(後編)
片山 修


【対談】
沈黙の世界のなかで生きている実感を得る。
髙樹のぶ子vs青木裕子


【人間探訪】丘みどり  
母との約束を絶対に守りたい。それが私の原動力です。


第4回 読者手記、発表!
テーマ「運命の出会い」


★好評連載★
世界への扉41
「女性大統領」を阻むガラスの壁。
三浦瑠麗

【シリーズ】鎌田實の輝く人生の「終い方」12
「〇」と「×」のあいだの「△」。
鎌田 實

シルバー・アンダーグラウンド ~置き去りにされる高齢者たち~16
中国残留日本人を待ち受けた苦難の道。(上)
石井光太

シルクロード「仏の道」紀行
第二部 天山南路 第五回 クムトラ千仏洞。
安部龍太郎

寄せ場のグルメ7
「東京の台所」魚河岸と築地市場。(下)
中原一歩

名越康文のシネマ幸福論17

「異質」との遭遇。
名越康文

大相撲の不思議50
顔触れ言上。
内館牧子


◉連載小説◉

蒼天有眼 雲ぞ見ゆ12   山本一力

芦東山14   熊谷達也

覇王の神殿17   伊東 潤


読者手記大募集!
(第7回 テーマ 卒業)


ushio情報box
暮らしの相談室(保険編)もし、わが家が洪水被害に遭ったら?/サトミツの知っててよかった!お掃除豆知識(どのくらいの頻度で掃除をしたらいいの?)/シニアのためのスマホ講座【スマホおさらい編②】(カメラ操作の基本をおさえてピンぼけ写真から卒業しよう)/悠々在宅介護術【身だしなみ編②】(「耳、爪」の手入れをお手伝いしたい!)/家計にやさしいエコライフ(「時短調理」でエコクッキング)/快適生活 ワンポイントアドバイス(体を温める)/災害列島で生き抜く~本当に必要な防災用品とは~(備蓄する非常食は何がよいのか?)/美と健康のための新習慣(肩も、気持ちも、重さスッキリ!)ナンバープレイス/おいしく食べて健康づくり(冬の乾燥肌予防)/シネマ&DVD/ステージ&ミュージアム/短歌/俳句/時事川柳/最近気になるMONO(寝る前にポカポカ)


ずいひつ「波音」

父の『論語』(中西 進)/腰痛考(堀川惠子)/ローマ教皇の「非核」の訴え(三山秀昭)/サクラメント(ゆき惠・ヒアシュ)/最後の宗教(海猫沢めろん)


カラーグラビア
PEOPLE2020/世界のネコたち(スペイン)/〝ティー・エイジ流〟カフェ散歩(「手の仕事」と湯気に包まれる)/シルクロード「仏の道」紀行(クムトラ千仏洞)/トピックス(子年さん、いらっしゃい!)


潮ライブラリー/新聞クリッパー/今月のちょっといい話/クロスワード・パズル/囲碁・将棋/読者の声/編集を終えて

概要

  • ◉特別企画◉ 解読!日本の選択

【対談】「ブレない歴史観の磨き方。(後編)」安部龍太郎(作家)vs佐藤優(作家・元外務省主任分析官)

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 2月号の特別企画は「解読! 日本の選択」。その冒頭を飾るのは、先月号でも大反響をいただいた作家の安部龍太郎氏と、元外務省主任分析官の佐藤優氏による対談の後編。今回は、混迷を極める現在の日韓関係と、江戸時代の外交術から見た打開策について語っていただいた。

 特筆すべきなのは、従軍慰安婦問題への言及。佐藤氏は、従軍慰安婦問題は歴史認識問題の一部ではなく、「非歴史的問題」であるという。つまり女性に対する深刻な人権侵害として、韓国だけでなくアメリカなどでも捉えられており、それは日本人にとって広島・長崎の原爆体験が「過去の一部」ではないことと同じだと説く。

 それに対し安部氏は、泥沼とも言えるいまの日韓関係を打開するヒントとして、豊臣秀吉と徳川家康の交渉術を例に挙げる。小牧・長久手の戦いで劣勢に立たされた秀吉は、知恵と忍耐、そして度量を働かせて、最終的に家康との和平交渉に成功したエピソードを紹介。

 対談の最後で安部氏は、「歴史から真摯に学び、確固たる歴史観や人間観をもっていなければ、権力者のウソにすぐ騙されてしまいます」と指摘する。また佐藤氏は、「いま自分たちがどんなに大変な状況に置かれようとも、決してあきらめず自分が変わっていけば、必ず未来は開かれる。そうやって歴史を切り拓いてきた先人のストーリーを生き生きと描く歴史小説は、読者に無限の希望を与えてくれる」と述べ、重厚な対談を締めくくっている。

 

 

  • ●特集● ニッポンの肖像

「うちの子に限って――SNS犯罪の闇。」高橋暁子(ITジャーナリスト)

【対談】「交通誘導員とゴミ清掃員が見たニッポンの現実。」柏 耕一(編集者・交通誘導員)vs滝沢秀一(お笑い芸人・ゴミ清掃員)

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 201911月に大阪市で発生した、小学6年生女児誘拐事件。被害者と加害者が知り合ったきっかけは、オンラインゲームアプリからだった。今、大人の知らないところで、子どもたちがSNSを通じてつながり、被害に遭う事件が増えている。

 こうした現状に対し、特集「ニッポンの肖像」では、元小学校教員でITジャーナリストの高橋暁子氏に、いま子どもたちに何が起きているのか、そして大人はどのような対策を取ればよいのかを解説していただいた。

 便利で手軽だが危険な側面もあるスマホやSNS。しかし子どもたちからスマホを取り上げるという対処療法だけでは、解決にはつながらない。むしろ高橋氏は、「若年層の性暴力被害者の多くは、家に居場所がないために家出した後、ツイッターなどのSNSで知り合った相手から被害を受けている」「悩みを打ち明けたり、助けを求めたりできる場が現実世界にあることが、子どもたちが犯罪被害に遭わないためにまず大切なことなのだ」と指摘する。まさに私たち大人に突き付けられた問題提起だと言えよう。

 もう一つの特集は、ゴミ清掃員と交通誘導員の二人が語り合う対談企画。実はゴミ清掃員の滝沢秀一氏はお笑い芸人、73歳の交通誘導員・柏耕一氏は編集者という本業を持っている。しかし生活のため、日銭を稼ぐために、副業を始めざるを得なかった。二人の楽しくもどこか悲哀に満ちた語らいを読むと、今の日本が抱える厳しい現実が浮き彫りになってくる。

 興味深いのは、ゴミの出し方から、捨てる人の生き方や人生観が見えてくるという滝沢氏の指摘。また柏氏は、全国で55万人いる警備員の約4割が、高齢者中心の交通誘導員であると述べる。ゴミ収集員と交通誘導員という身近な世界から、食品ロス、格差社会、高齢者雇用といった現代的テーマを見通す異色対談、ぜひお読みください。

 

 

【巻頭企画】「色彩豊かな日本のあなたへ。」ロバートキャンベル(国文学研究資料館館長)

 

 巻頭企画では、日本文学者でテレビでもおなじみのロバートキャンベル氏が登場!

 キャンベル氏が日本に移り住んだのは1985年。昭和の終わりから令和までの歴史の証人として、バブル崩壊、人口減少、IT革命、非正規雇用の増大、自然災害などが相互に関わりながら、日本社会が大きく揺さぶられてきたと説く。

 そして令和に入ったいま、少子高齢化と、長期的な不況、さらに終身雇用制度の崩壊などで、若者たちは「漠とした不安」ではなく「くっきりとした不安」を感じていると喝破。さらに、職場以外で自己啓発や勉強を行わない日本人は、世界と比べて圧倒的に多いと警句を発する。日本の若者が自分の殻に閉じこもり、他者との融和を失っていく現状は、イノベーションにブレーキをかけ、若者の潜在力の開花を阻害するという悪循環を生み出している。

 そうした中、出入国管理法が改正され、外国人労働者が日本に流入するという事態となり、均一性が高かった地域社会に異なる「色」がまじりあった状況になりつつあることを紹介。キャンベル氏は、ここで発想の転換を訴える。いわく「日本人は、世界でもっとも細やかに色調に言葉を当て、それぞれの色調をはっきり識別できる民族」であり、「自らの色が空色から浅葱色(薄い藍色)にちょっと変わるくらいのことは恐れず、むしろ色目が変化する過程に自ら参画し、楽しむくらいの余裕を持ってほしい」と。キャンベル氏の提言は、閉塞感はびこる日本社会に新たな萌芽を芽生えさせる、重要なメッセージとなるであろう。

 

 

【人間探訪】「丘みどり――母との約束を絶対に守りたい。それが私の原動力です。」

 

 3年連続で紅白歌合戦出場を果たした、演歌歌手の丘みどりさん。大晦日、テレビの前で彼女の歌声に酔いしれた読者も多いに違いない。そんな丘さんは、子どもの頃から「民謡の天才少女」と呼ばれ、演歌歌手になることを夢見てきた。芸能界に入るため、最初はアイドルとしてデビュー。その後念願かなって演歌歌手となるが、事務所の方針でミニスカートにへそ出しルックと、演歌歌手とは思えない格好を強いられるなど、本当につらい時期だったと述懐する。さらに一番の理解者であった母親ががんに侵され、看病のため一時は芸能活動を中止した。

 母親は47歳の若さで他界。あまりのショックに引退も考えたが、生前の母親が遺した「やらずに後悔するより、やって後悔の生き方をしてほしい」との言葉を思い出し奮起。そこから彼女の大躍進が始まったのだ。

 キュートな笑顔の裏には、母親からの叱咤や愛情、多くの悲しみや苦難を乗り越えた経験、そして石川さゆりさんなど多くの先輩たちの存在があった。丘さんの知られざる側面がわかる独占インタビュー、ぜひとも紅白の余韻に浸りながら、楽しんでいただきたい。

 

 

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