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今月の注目記事
  • 【特別企画】いま政治がなすべきこと

    ●「日本政治は透明性を取り戻すべき」牧原 出(東京大学先端科学技術研究センター教授)

    ●「政治に求められるイマジネーション」松田喬和(毎日新聞社特別顧問)

    昨年来、国内政治は官邸の疑惑、官僚の不祥事等によって大きく混乱している。政権の支持率は急落する一方、野党も政権を獲得するための戦略論に欠け、緊張感のある政治になっているとはいい難い。政治が、国民からの信頼を取り戻し、これからの時代に対応していくためには何が必要なのか。

     牧原氏は、現在の疑惑、不祥事の背景には、首相官邸・霞が関(中央省庁)の幹部と現場の官僚とのあいだに生じた深刻な亀裂がある、と指摘する。幹部官僚が部下を顧みず官邸の利益に従う一方、現場の官僚が不祥事等をマスメディアにリークしてこれに対抗する、という状況が起こっているのだ。こうした深刻な亀裂は、「『政治主導』と『決められる政治』が『自浄作用と透明性』を欠いてしまった結果」、と牧原氏は分析している。日本政治の混迷の要因を明らかにし、安定化への道筋を語った重要な論考となっている。

     松田氏の論考では、安倍政権が行っている政治の手法を政治史の観点から分析している。松田氏は、平成の時代において政治は「『コンセンサス(合意)型デモクラシー』から「多数決型デモクラシー」へと移行した」という見方を紹介している。昭和期の政治では、異なる派閥、与野党間での合意形成を重視する「コンセンサス型」の政治が主流であり、「族政治」や「金権政治」という負の側面が顕在化していた。平成期、特に安倍首相が行っている「多数決型」の政治は確かに、「コンセンサス型」の負の側面から脱却した。しかし松田氏は、多様性が重視される現代において「一票でも数で上回った時点で少数派の意見を排除し、白黒をはっきりさせる」多数決型政治への偏重は「ミスマッチ」である、と述べる。では、次の時代を開くためには、どのような政治が必要となってくるのか。明瞭に語る松田氏の記事を是非お読みいただきたい。


     

    【特集】定年後を楽しむために

    ●「『いい人になる』ことが定年後を愉しむ秘訣」内田 樹(神戸女学院大学名誉教授)

     昨今、「定年後」に関する書籍が数多く出版されている。定年後の資産運用や定年後の健康等、取り扱うテーマは幅広い。しかし、なぜ「定年後」がそれほどまでに重大な問題なのだろうか。「定年後」に生き生きと人生を送っていくためには、何をすればよいのか。巷にあふれる「定年後」論とは異なる角度から、内田氏が語った。

     内田氏は「定年後」の問題について、自らのクラス会を例に、「現場」を失ってしまうことが最大の危機だという。第一線の現場で働くからこそ、社会の現実、現代日本の本質的な問題を感知することができる。それがないと「メディア経由の情報しか触れることができず、加工される前の『生もの』の現実との接点を失う」ことになってしまうのだ。

     そのうえで内田氏は、定年を迎える人たちに「お稽古事をする」ことと「公共的なもののために汗をかく」ことを勧めている。自分から「叱られる現場」を求めて、師匠に厳しく叱られるお稽古をはじめる。無欲でなくても博愛的でなくても、「いい人になる」、いや「いい人のふりをする」だけでいい、というのだ。

     内田氏の鋭くも軽妙な視点が光る、大変興味深い記事となっている。




     ●【対談】「『真実の発見』が裁判とメディアの使命」大谷昭宏(ジャーナリスト)×藤井誠二(ノンフィクションライター)

     本年5月、2013年に愛知県内で漫画喫茶女性従業員の遺体が発見された事件を扱った、の藤井氏の著作『黙秘の壁 名古屋・漫画喫茶女性従業員はなぜ死んだのか』が小社より発刊された。そこで、今回の対談では『黙秘の壁』の著者の藤井氏と、ジャーナリストとして長年、事件報道に携わってきた大谷氏とが、現代の司法とメディアが抱える問題と、その本来の使命について語り合った。

     藤井氏によると愛知県の事件の経過は次のようになっている。「傷害致死容疑で逮捕された元経営者夫婦が、いったん女性従業員の殺害を認める供述をしたものの、弁護士がついてから黙秘に転じ、死因不明等の理由で不起訴、死体遺棄罪のみ有罪判決となりました」「被害者遺族は、元経営者夫婦が不起訴になった後も事件の真実を求めて損害賠償請求訴訟を起こし、不起訴記録の開示を求め続けます」となっている。

     マスメディアでは、冤罪事件への注目度は高い一方、被害者側の人権はほとんど取り上げられてこなかった。その結果、一番弱い被害者側の「知る権利」が黙秘によってないがしろにされてしまっているのだ。

     徹底的に取材を重ねた本事件をめぐり、司法とメディアを鋭く批判する両名の対談を是非お読みいただきたい。


    ●【連載】自動車大戦争6「『シェアリング』時代の到来とクルマの進化」片山修(ジャーナリスト)

     片山修氏の好評連載。今回は、社会におけるクルマのあり方が根本的に変わりつつある状況から、これからのモビリティ社会の姿に迫っている。

    本年1月、トヨタ自動車社長の豊田章男氏は「トヨタは車をつくる会社から、モビリティサービスの会社に変わります」と宣言した。この宣言の背景には、若い世代を中心に、クルマはもはや「所有」の対象ではなくなってしまっていることがある。

    アメリカでは、ライドシェアリング(相乗り)のサービスが普及しており、日本においてもカーシェアリングのサービスが拡大し、ライドシェアリングも現実的に議論されている。わざわざ「所有」しなくても、手軽に「利用」できるように――クルマのあり方の変化をとらえた、読み応えのある記事である。

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