北京大学版
潮出版社 創業55周年 記念出版 中国の文明
|監修・監訳にあたって |ご 挨 拶 |トップページへ |配本スケジュール 日本語版 監修・監訳:稲畑耕一郎(早稲田大学文学学術院教授) 原著主編:袁行霈 厳文明 張伝璽 楼宇烈 〈全8巻〉
監修・監訳にあたって 稲畑耕一郎(早稲田大学文学学術院教授)

 いま、私たちの世界は、グローバリズムという大義のもとに、人類がこれまでに経験したことのない規模と速度で一つになろうとしている。その進行の過程ではそれぞれの主張と利害とが複雑に絡み合い、そこにエネルギー・食料・技術などの争奪が重なって、民族紛争・宗教対立・環境汚染・経済格差・通商摩擦などが大きな課題となって立ちはだかってきている。

 そうした課題のどれ一つを考えるにせよ、世界の約5分の1を占める13億人余の人口とEU28ヵ国の2倍にもなる広大な版図を有する中国の存在を無視して語ることの無意味なことは、誰もが理解するところである。今や私たちは中国について、これまで以上に無知のままでは済まされない時代を迎えているのではないか。しかし、中国は国土が広く、人口が多いことに加え、社会は甚だ複雑で、その歴史も格段と長い。千変万化して今日に至る中国の実像をしっかりと捉えることは容易ではない。

 それでも、私たち自身のより良き現在と未来にとって、中国は理解すべき必須の対象であることに変わりはない。その理解のための一つの手掛かりとして「文明史から見た中国」という視点があるのではないか、と私は常々考えてきた。

 人類の文明史のなかで、その時々の「中国」が果たしてきたかけがえのない貢献は十分に首肯できる。同時に、その「中国の文明」が世界の他の地域の文明から受けて来た本質的な影響も否定すべくもない。その事象の意味をよく理解することが、今日のグローバリゼーションのなかにある中国の姿を理解する上で端的にして且つ有効な方法となるのではないか。

 中国という大地の上に生成発展してきた「文明」の衝突と融合の姿は、歴史時期におけるグローバリゼーションそのものだからである。そうした思いを持って私たちは北京大学の友人たちが総力を挙げて編纂した大冊の日本語版の翻訳という一大事業に取りかかった。

 「中国文明」に関する著作の多くは、いわゆる「黄河文明」前後の古代だけを語るものが多いなかにあって、本書は近代までを含んでおり、他に類を見ない本格的なものとなっている。現在の中国の研究者たちが今に至る自らの「中国文明」お生成発展の跡をどのように捉えているか知ることも、現在の中国理解に資するところがあるに違いないと確信する。

 広く江湖のご支援をお願いする次第である。

【プロフィール】 稲畑耕一郎(いなはた・こういちろう) 早稲田大学文学学術院教授。1948年、三重県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。これまでに南開大学東方芸術系客員教授、北京大学中国古文献研究センター客員教授などを兼任。専攻は中国古典学。「四川三星堆」展をはじめ、「秦の始皇帝とその時代」「紫禁城の女性たち」「陳舜臣の世界」「梅蘭芳」展などの文物藝術展のプロジェクトなどに携わる。著訳書に『一勺の水――華夷跋渉録』『神と人との交響楽――中国仮面の世界』『境域を越えて――私の陳舜臣論ノート』『中国皇帝伝』『中国古代文明の原像』(共編著)『屈原研究・屈原賦今訳』(訳)『万暦十五年――1587「文明」の悲劇』(共訳)『中国五千年史地図年表』、監修に『図説中国文明史』(全10巻)など多数。
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